囚われの人


「何言ってんだ!!そんな事言えばオレが・・・」
「クス・・・そんなに必死になって・・・本当に可愛いね。」
乾は海堂に近づき顔を覗き込んでわざと顔を寄せた。
(近寄るな・・・ヤバイって・・・好きな顔してんだよ!)ドギドキしながらも必死で冷静を保とうとするがここで乾をほって行けそうな状態ではない。
大きなバックを抱え乾はもう海堂の所に行く気満々だった。
「一晩でいいから!お願い!!」
両手を合わせて海堂にお願いする姿・・・それが海堂の心を動かす。
「・・・・・一晩・・だけだからな・・・」
「うん、ありがとう。名前聞いてなかったね・・・」
耳元でそっと聞こえた声にまた驚いて海堂は顔が赤くなる・・・外が暗くて良かったとこの時は本当にそう思った。
「海堂・・・・・ッス」
「下の名前は?」
「言いたくない・」
「なんで?教えて・・・海堂君」
(耳元で囁くな!!腰に来るんだよ!)っぱっと離れて海堂は耳を抑えて小さな声出す。
「薫・・・海堂薫・・」
「いい名前だね・・・素敵な名前だ。親御さんも素敵な名前を付けたね。」
「/ / / / / / /」
今まで名前では散々冷やかされ虐められ、いい思い出がなかった。
こんな名前を付けた親でさ恨んだ事もあった・・・でも今目の前にいる乾が素敵な名前だと言ってくれた瞬間・・・凄く嬉しかった。


家路に向かう間乾はいろんな話をしてくれた。
海堂が知らないことそして聞いた事には全部答えてくれる。
帰宅の道がこんなに楽しいと思った事は今までなかった。
「ここ・・・・ッス」
「凄いね〜こんなマンションに一人で住んでるの?」
「はぁ・・・親が用意してくれたッス・・」
「親御さんが?」
「海外に仕事で・・・・心配だからセキュリティーのしっかりした所じゃないとダメだって・・」
「そうか〜何かわかるな・・・薫君可愛いからね〜」
「恥ずかしい事言うんじゃねぇ〜!早く行くぞ!!」
乾の腕を引っ張り海堂はマンションの中に入って行った。

カギを開け中に入る・・・
誰もいない部屋の中は暗くて寂しい。
「ここかな?」
乾が手探りで電気を点けてくれる。
「入って下さい。」
「では、お邪魔します。」
スリッパを置き乾を招き入れる・・・今まで誰も呼んだ事のない部屋の中に。
「ここに一人で住んでるの?凄いね〜」
一人暮らしには確かに広すぎる部屋。二つある部屋・・・そこの一つしか海堂は使っていない。
「ジロジロ見んな!」
「ごめん!ごめん!!では、今日1日お願いします。」
乾は海堂に頭を下げ挨拶をしてまたにっこりと笑った。
この笑顔を見るたびに海堂の鼓動は早くなる・・・。
照れを隠すように海堂は乾に使っていない部屋に案内した。
「ここ使って下さい。」
「リビングのソファーでも良かったのに・・・」
「客をソファーで寝かすなんて出来ねぇ〜。」
「お客ね・・・ありがとう」
乾は海堂に案内された部屋でバックを降ろすと後ろにいた海堂の肩を押しながらもう一度リビングに戻った。
「お腹減ってる?」
そう言えば乾と出会ってそんな事も忘れていた。確かにお腹は減っていて・・・
「え?まぁ・・・・」
「そう、じゃ〜お礼に何か作るよ!!その間に風呂にでも入って来て。」
この場にいてもどうしていいのか分からないし海堂は言われるまま風呂場に向かった。
「オレ・・・何やってんだ・・・」

「わぁ〜これ作ったんスか?」
「まぁ〜早く座って!!」
一人暮らしをしてこんな凝った料理を食べるのは久しぶりだった。
海堂は席に座ると目の前の料理を食べ始める。
「上手いッス!!あ、これも・・・」
「良かった〜喜んでもらえて。」
二人で食べる食事は凄く楽しい・・・今までもサークルの付き合いでみんなで食べに行っても海堂は落ち着かなかったし・・・味わった事もない。
でも、今日はなんだろう・・・海堂は始めて会った人なのにまるで違和感なく乾と語り合い向かい合って食事をしていた。
本当に・・・心地いいひと時だった。




甘い感じになってきたかな〜
まだ続くよ〜〜〜


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